2015年04月24日

みーちゃんとの馴れ初め 〜 最終編

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姉は、必死に調べた。みーちゃんと、日本へ帰る方法を。壁は、やはり検疫だった。全ての哺乳類が罹患し、人間が感染すると100%死に至る、恐ろしき狂犬病。アフリカに跋扈する死神はエジプトとて例外ではなく、毎年数多の命を奪ってゆく。今でこそ健康そのものとはいえ、かつて路傍に置き去りにされていたみーちゃんを世界でも数少ない狂犬病清浄国である日本へ連れ帰ることは、相当な難題だった。

しかし、もともと家族の反対を押し切って海を渡るほどの姉。思い立ったら、留るはずがなかった。診断可能な獣医を探し、しかるべき措置を経て、晴れてみーちゃんは日本の土を踏んだ。成田へ迎えに行った両親は、姉の手荷物に驚いた。だが遠い異国暮らしを支えた"相棒"に、両親は快く理解を示した。かくして数奇な運命の元に産まれついたみーちゃんは、ようやく日本に安住の地を得た。

手足が長くスマートで、以前はそこはかとない異国情緒を漂わせていたみーちゃん。家族の愛情に包まれ何不自由ない暮らしを重ねた今ではだいぶ丸くなり、かつての面影は想像することすら難しい。だがガラス越しに遠い空を見上げるエメラルド色の瞳は時に憂いを含み、私にはみーちゃんが、彼方の故郷へ叶わぬ思いを馳せているように見えてならない。

トン、トン、トン… 母の包丁の音に、むくっと起き出すみーちゃん。今日もまた、みーちゃんの一日が始まる。

〜 完 〜

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今日のごはんは、何かニャー?望郷の念をおもんばかり勝手に感慨にふける宮っ子をよそに、意外とお気楽なみーちゃん
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2015年04月22日

みーちゃんとの馴れ初め 〜 中編

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幼くして母親と生き別れたためか甘えん坊で、誰よりも姉を慕うみーちゃん。みーちゃんは遠い異国におけるうら若い女のひとり暮らしに、癒しと彩りをもたらした。姉は語る。「みーちゃんがいなかったら、あそこまで頑張れなかったよ」。みーちゃんを救うつもりが、いつしか自分のほうが支えられていたのだ。

仕事も軌道に乗った。現地に友人もできた。心の支えだってある。だがエジプトの現地生活は、そろそろ終わりを迎えようとしていた。姉には大きな、次の目標があったからだ。姉は、悩んだ。「私は、日本へ帰らなければならない。けれど、みーちゃんをどうしよう?」

幼いころから、教育に携わることを夢見てきた姉。彼女のエジプト赴任の目的は青年海外協力隊として、現地のストリートチルドレン問題と向き合うことだった。幼くして両親に見捨てられ、学ぶ機会も与えられず、貧困のスパイラルを巡り続ける少年少女− 姉には路傍のみーちゃんが、不遇な子どもたちと重なって映ったに違いない。誰よりも志高く、難題に向き合った姉。ここでみーちゃんを放り捨ててひとり帰還することは、自身が歩んできた道の全否定に他ならなかった。

〜 最終編へ続く
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2015年04月20日

みーちゃんとの馴れ初め 〜 前編

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みーちゃんは、エジプトの猫である。「エジプト原産の品種」ではない。エジプト猫のDNAを持ちエジプトに産まれついた正真正銘、エジプトの猫だ。

姉がエジプトに赴任していた、10年ほど前のことである。ある日姉が買物帰りにいつもの道を歩いていると、ニィイ、ニィイ… 木陰から、今にも消え入りそうな動物の鳴き声が漏れてきた。もともと好奇心旺盛で、物怖じしない姉。しゃがんで木陰を覗き込むと、生後間もない子猫が箱に入れられ、捨てられていた。痩せ細り、眼差しは弱々しく、それでも懸命になにかを呼び続ける幼子−
「このままじゃ、死ぬなこれ」。姉は、直感した。女一人でエジプトへ乗り込む気丈な姉だが、この時何かが、姉の母性本能を呼び覚ました。姉は考える間もなく買物袋に子猫を詰めてぶら下げ、家路を急いだ。

男勝りな姉も、遠い異国で日本が恋しかったのだろうか。既にアラビア文化には馴染んでいたものの、姉はエジプト産まれの子猫を「みーちゃん」と名づけた。この日から、姉とみーちゃんとの協同生活が始まった。状況は、芳しくなかった。元から衰弱していた上に、決して品質がよいとはいえない現地の粉ミルク。しかし少ない獣医をあたり、献身的に介護したおかげで、みーちゃんは次第に元気を取り戻した。

〜 続く
posted by 宮っ子 at 19:03| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月19日

ジャノメ、始動―

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亜熱帯アジアン水棲チームで初めに外に出したのは、ジャノメイシガメ。なんとなくだけど、カントンやミスジよりも低温で活発に動いてる気がするからなあ。最高気温が20℃くらいでも、元気いっぱい。わりと機敏に、餌を取る。このあたりで雌雄を合わせ、あわよくば交尾へと持っていきたい。

ここのところは寒の戻りもあったけど、ようやく4月らしい陽気になってきたね。トウブやミツユビといった温帯チームも、日に日に活発に。もう1か月もすれば、早いものは産卵が来るだろう。気温の低下に気を付けつつ、ガッツリ栄養を貯め込ませていこう。
posted by 宮っ子 at 19:23| Comment(8) | TrackBack(0) | カメ飼育日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月14日

トウブハコガメもガチ冬眠、終了。

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ミツユビに続いて、こちらも冬眠終了!トウブチームだ。こいつらはミツユビほど飼育歴は長くないものの、長いので10年。手前のが、2004年だか2005年に、ウチで産まれた個体だ。種親を亡くしてからというもの、意欲を失って長いこと繁殖をやめていた。しかし復活した翌年、2011年に初繁殖してくれた個体だ。母ガメの虎柄模様を、しっかりと受け継いでくれている。

去年はさんざんだった、トウブチーム。しかしフロリダは順調に行ったし、こちらも続いてほしい。まずは水をしっかり飲ませて、冬の間の老廃物をガツンと出させる。
posted by 宮っ子 at 06:00| Comment(2) | TrackBack(0) | トウブハコガメの慄き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月12日

ガチ冬眠チーム、始動! 〜 21度目の冬を越えて

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久しぶりに、暖かな1日だった。ここんとこ、寒の戻りが凄かったからな… 1週間、雨降り続きだったし。せっかくクリーニングから上がった冬物のコートを、引っ張り出すとこだった。
この陽気にむくむくっと出てきたのは、陸棲ガチ冬眠チーム。トウブやミツユビといった、北米アメハコだ。まだ気温が20℃に届かないので、餌はやらない。でも水は飲む飲む!冬眠中飲まなかったことだし、さぞかし乾いてるんだろうなあ。

この写真は、ミツユビの親子。共にウチで母亀として活躍してくれている、現役の種親だ。右の個体が、アメハコ道に足を踏み入れたキッカケ。初夏にはまる21年を迎える、大御所だ。爬虫類の情報がようやく揃いはじめた、でもまだまだカオスだった頃だなあ。
今でも隣の娘と共に、バリバリ現役で子を残している。カメの中でも、アメハコは特に長寿だからね。人生の2/3を、このカメと共に過ごしてきてしまった。なんだか感慨深いものがあるよなあ。
posted by 宮っ子 at 17:27| Comment(4) | TrackBack(0) | ミツユビハコガメの呟き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月11日

ちょっと、癖がある。アメハコの餌付け 〜その2

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2.配合への移行 − 条件反射

バランスや利便性を考えると、メインは配合に餌付けたい。飼育が格段に安定化するからね。生き餌を食べるようになったら、徐々に配合に慣らしていこう。そこで、ちょっとしたコツがある。


○条件反射を狙おう

条件反射とは、動物において、訓練や経験によって後天的に獲得される反射行動のこと。ソ連の生理学者イワン・パブロフによって発見され、パブロフの犬の実験で有名になった。(Wikipediaより引用)

アメハコは人に慣れやすいので、生き餌を与えていると次第に、飼育者を見上げて寄ってくるようになる。飼育者のことを、餌をくれる存在として認識するわけだ。人を恐れなくなる。こうなったら、飼育容器に餌を放り込むだけでなく、ピンセットからの給餌に移行しよう。ピンセットに挟まったものは、餌だ。食べられると、認識させるのだ。これが、条件付け。

ピンセットの生き餌を追い回すようになったら、しめたもの。ドサクサにまぎれて、配合に変えてしまおう。きっと、追い回してくれるはずだ。ピンセットの先にあるのは餌だという"条件"に、"反射"してくれる。そして配合の味と匂いに慣れたら、置いた配合でもがっつくようになる。

〜  〜  〜

まあ難しく考えなくても、初めから配合をパクついてくれる個体も少なくない。でもアメハコベビーはやっぱり癖のある個体が多いのは事実。知人も毎年孵化させては、何頭も落としてしまっている。このへんに関してはガチ水棲ガメのほうが明らかに楽だな。カントンやミスジで、苦労したことないもの。
とりあえず食べだせば、あとはとても飼育しやすいカメに早変わり。最初が、肝心だ。こいつらも気を抜かずに育てよう!
posted by 宮っ子 at 21:41| Comment(6) | TrackBack(0) | じょうずな飼い方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月09日

ちょっと、癖がある。アメハコの餌付け 〜その1

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フロリダが産まれて、1週間が経過した。アメリカハコガメベビーの餌付けはだいたい、このくらいから始まる。一度餌付いてしまえばその後は全く難しいことはないんだが、やっぱアメハコは、餌付けに若干の癖があるんだよな… 方法はいろいろあるみたいだけど、ウチでのやり方を。

    〜    〜    〜

1.「食べること」が最優先
ウチでは何よりも、まず"食べること"が最優先。食べなきゃ、何も始まらないという考えだ。だから初めには、なんでもいいから嗜好性の高い餌を与えることにしている。
昆虫や生餌の味を先に知ってしまうと、バランスの取れた配合に餌付きにくくなる、という話も聞く。生餌だけだとバランスを取るのが難しいし、安定供給も難しい。この考え方も、あると思う。

でも食べなかったら、何にもならんのだよな… 配合に馴染まない個体に頑なに与え続けても、ホントに食べないからね。餌付いてるならともかく、これからの個体と根競べしても、爬虫類って死を待つだけだから。だから宮っ子は、まず何でもいいから食べる方に持って行きたい。1ヶ月ワームを続けて与えたところで、死にはしないもの。だからまずは栄養無視で、とにかく嗜好性の高いものを与える。ウチで成績がいいのは、これ。

・肉類
ひき肉、牛ハツといった肉類。野生のベビーがいわゆる肉を食べる機会はまずないだろうけど、ベビーは生の肉類をとにかく好む。アジアン水棲ガメと異なり、しっかり消化もしてくれる。ひき肉は脂肪もあるが、成長期だし問題ないだろう。むしろ体力のないベビーには、保険のために脂肪をつけさせたい。

・ミルワーム
嗜好性はすこぶる高い。キープも楽。ただ外皮が硬く産まれたてのベビーには消化が辛そうなので、脱皮したてのホワイトワームを与えたい。また市販のサイズは若干でかいので、ウチでは自家養殖して、一口サイズを確保している。春のハッチシーズンに合わせるように、冬のうちから殖やしておこう。

・ワラジムシ
ミルワームのうねうね動きに反応しなくても、ワラジのカサカサにがっつく個体は少なくない。屋外で取ってきて、与えてみよう。ダンゴムシに比べ外皮が柔らかいのが利点。ただ動きが早いので、トロくて捕まえられない個体には、ダンゴムシの方がいいかもしれない。両方、キープは簡単だ。ただ水気を切らすとあっけなく全滅するので、保水には十分注意。

〜 続く
posted by 宮っ子 at 21:38| Comment(6) | TrackBack(0) | じょうずな飼い方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月07日

プライスリストの、ノスタルジー 〜 最終編

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無造作に折り畳まれた、手書きのA4紙− 紛れもない、プライスリストだった。そこにはかのBIBLEで魅せられた世界の爬虫類たちの名が、ずらりと並んでいた。写真なんて、ありゃしない。素っ気なく種名と価格が並んだ単なる一覧表だが、専門ショップに通うこともできない、情報に飢えた地方の中学生には、それでも宝の地図だった。
あの美麗種が、こんなに安いのか?こんな地味ガメが20万円なんて、いったいどこがいいんだろう?A4紙に展開される、めくるめくワンダーランド。目の前には、果てしない宇宙が広がっていた。その夜、将来のマニアの卵はプライスリストを布団まで持ち込み、興奮の一夜を過ごした。

    〜    〜    〜

手中のスマホから、瞬時に世界中の情報へアクセスできるこの時代。ショップの生体はネットでチェックが当たり前の世代にこの感覚は、理解し難いかもしれない。だが、確かに存在したのだ。郵便受けの封筒を、心待ちにしていた時代が。紙切れの種名に一喜一憂し、妄想を膨らませ、家の切手を使い尽くしては親にこっぴどく叱られた時代が。

昔のBIBLEを読み返していたら、いつの間にか淡いノスタルジーに浸っていた。今度の週末、開いてみよう。埃を被った、学習机を。もしかしたら秘密の引き出しの奥に、青春時代の興奮がまだ眠っているかもしれない。

 〜 完
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2015年04月05日

プライスリストの、ノスタルジー 〜 中編

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そんな当時の熱帯魚誌のショップ広告にはたいてい、こんな一文が盛り込まれていた。「価格表、送ります。62円切手○枚」。そう、これがプライスリスト。ショップ指定枚数の切手を送れば後日、ショップの在庫・価格一覧表が送られてくるという仕組みだ。これだけで、胸が躍った。BIBLEのあのリクガメは、いくらだろう?あのたてがみが立派なトカゲは、果たして日本で買えるのだろうか?少年は家中の切手をかき集め、プライスリスト送付を謳うショップへ、片っ端から書簡を送りつけた。

部活から帰れば毎日のように、郵便受けを覗く日々。だが期待に反して、プライスリストはなかなか届かなかった。後年分かったことだが、私が広告を探したBIBLEというのは爆発的爬虫類ブームが起きた90年ごろの発刊であり、BIBLEを手にした90年代中盤にはブームも鳴りを潜め、少なからぬショップが廃業または取り扱いをやめていたらしい。安易にバブルに乗っかったとしか思えない、熱帯魚店や総合ペットショップ・デパートの広告が幅を利かせていることからも、それは察することができる。

だが地方住まいの中学生が、そんな事情なぞ知る由もない。来る日も来る日も、リストの到着を待ち続けた。さながら、親鳥の帰りを待つ雛のように。いつしか、リストの存在を忘れかけていた頃− 部活から帰ると、母親が声を掛けてきた。「沼津のなんとかってとこから、宮宛てに封筒が来てるよ」。

刹那、電流が少年の体を駆け巡った。プライスリストに、違いない!私は母から封筒を奪い取り、興奮のままに封を開けた。

〜 続く
posted by 宮っ子 at 14:19| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月03日

プライスリストの、ノスタルジー 〜 前篇

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24年前の、爬虫類の広告。今と名前が全然違う


この爬虫類の世界には、その言葉を聞いたときの反応によって飼育歴を推し量るキーワードというのが、いくつか存在する。そのひとつが、「プライスリスト」ではないだろうか。なんてことない、生体の価格が一覧記載されただけの紙っぺらだ。だがこの響きに淡いノスタルジーを思い出すマニア層というのが、今でも少なからず存在している。

    〜    〜    〜

四半世紀前、爬虫類界の黎明期− 我々は、とにかく情報に飢えていた。情報が、あまりに少なすぎるのだ。当時はようやくこの業界が陽の目を浴び始めたばかりで、それもやむをえない状況だった。
熱い専門誌も、あるにはあった。文字通りマニアの聖書であり今なお伝説として語り継がれる、「爬虫類・両生類BIBLE」。カメ界の権威・加藤進氏による名著、「世界のカメ」。しかしわずか数点の同シリーズを除けば一般愛好家向け専門誌は皆無であり、定期的な情報源としては「○ィッシュマガジン」や「アクアラ○フ」といった、月刊熱帯魚誌のおまけコーナーにすがる他なかった。

巻末の爬虫類飼育者自宅レポートは、何よりのお楽しみ。血に飢えた我々にはショップ広告ですら相当なご馳走で、この小さなモノクロ写真を食い入るように眺めていた経験を持つ人も、少なくないように思う。当時の私はこれだけのために、興味もない熱帯魚誌を購入していたものだ。

情報インフラの差も大きい。当時はようやくインターネットが普及の萌芽を見せたばかりで、ネットはまだまだ、一部の人々によるマニアックな世界と捉えられていた。いや、存在すら知らない人のほうが多かったかもしれない。
書籍も、情報インフラすらもない時代− 我々は情報に飢え、渇望し、限られた媒体に貪り付いていた。

 〜 続く
posted by 宮っ子 at 16:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする